さりはま書房徒然日誌2025年6月2日(月)

丸山健二『千日の瑠璃 終決6』より四月六日「私は外階段だ」を読む

外階段に立つ娘と周囲の霧。
霧の動きが娘の心を、作者の想いを語っているようで面白い。

外階段が語る、という設定も、人が使うものであり、外界と繋がるものであることを考えると興味深いものがある。
以下引用文。「彼女の首から下までを覆い隠し」という表現や、「苦悩は海の底に沈んでゆき」という文が、どこか抽象画を眺めているような気持ちにさせてくれる。

私が支えているのは彼女の体重のみで
   ほかには何もなく、

その間に霧はなおも勢いを増してどんどん押し寄せ
   町内一帯に蔓延り
      ついには彼女の首から下までを覆い隠し、

世間のどこでも見られる
   ありふれた苦悩は霧の海の底に沈んでゆき、

あらゆる問題が
   取るに足りない出来事として
      過去へ押し流されてしまう。


(丸山健二『千日の瑠璃 終決6』213ページ)

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