さりはま書房徒然日誌2025年6月3日(火)

丸山健二『千日の瑠璃 終結6』より四月九日「私は炊き込みご飯だ」を読む

うつせみ山に一人暮らす老人が山道で危ない目にあったけれど、無事に危機を脱した祝いに作ったこと「炊き込みご飯」が語る。

丸山先生は、以前にも身の廻りにある安い材料で作る、すごく美味しそうなレシピを語っていたことがあった。

この炊き込みご飯も、食べたことのない味ながら、見るからに美味しそうな気がする。
このほとんどお金をかけない美味しさが、その後に続く老人の気持ちをよく引き立てているのかもしれない。

そして彼は
   サバの水煮缶といっしょに
      出盛りの根曲がり竹の筍を刻んで
         よく研いだ米に混ぜ
            手製の竈でじっくりと炊き上げ、

下ろし大根をおかずに
   炊きたての私を頬張りながら
      「まだまだ私も捨てたものじゃないなあ」と
          自画自賛をくり返した。

それから
   まだ生き延びたがっているおのれに気づいて
      「この救いがたい俗人め」と
          さも嬉しそうに呟きながら
             この期に及んでまだ悔んだりする自分を卑下し、 


(丸山健二『千日の瑠璃 終結6』223ページ)

さりはま について

更新情報はツィッター sarihama_xx で。
カテゴリー: さりはま書房徒然日誌 タグ: , パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Time limit is exhausted. Please reload the CAPTCHA.