丸山健二『千日の瑠璃 終結7』より八月二十日「私は氷嚢だ」を読む
「熱中症にやられた少年世一」を見守る氷嚢が語る。
世一を常日頃厄介者扱いしている家族は心配するでもなく、それぞれ口実をつけて出かけてしまう。
そんな世一を見守る氷嚢の視線が温かく、何ともほのぼのとした気分になる……氷嚢に作者は自分の想いを託しているのだろう。
間もなく氷が全部融けて
冷水も温水に変わり、
ために私は
本来の役目を果たせなくなり、
しかし
それでも世一は邪魔者扱いせず、
だからこそ
彼の期待に応えようと懸命に頑張り、
(丸山健二『千日の瑠璃 終結7』356ページ)
やがて眠りにつく世一。
以下引用文、その無垢な魂が浮かんでくるよう。
また世一が大切に飼っている青い鳥オオルリの不思議な力を感じる。
ほとんど無傷の
さもなければ傷だらけの
世一の魂は
素早く夢の奥へと逃げこみ、
青色に発光する摩訶不思議な鳥たちに囲まれながら
馬上豊かに
真っ暗闇の彼方へと走り去り、
遠ざかる駒の詰め音を
籠の鳥のオオルリが引き継いだ。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結7』356ページ)