丸山健二『千日の瑠璃 終結7』より八月二十二日「私は見切りだ」を読む
海から山国のうたかた湖に迷い込み、そのまま居着いたカモメ。
でも開発された山林を豪雨が襲い、水質が汚れたうたかた湖に見切りをつける。
以下引用文。鳥や湖、作者の怒りが見えながら、どこかこの世を離れた視点で見つめているような、そんな詩情も感じる。
水質の汚濁による
餌の絶対量の不足と
羽毛に染みついて落ちない土の色と
悪しき激変に対する嫌悪感、
それはここ数日のうちに
さらに深刻なものと化し、
自慢の純白すら満足に保てなくなったカモメは
昨晩のこと
不気味なほど赤い月の下で、
鳥類への被災者対策はないのかと
そんな意味を込めた鳴き声を発した。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結7』362ページ)