丸山健二『千日の瑠璃 終結8』より九月十九日「私は化石だ」を読む
「オオルリを捜し求めているうちに 少年世一が暴雨のなかで発見した なんと 彼自身の化石」が語る。
丸山作品にはしばしばドッペルゲンガーが登場する。
この世一自身の化石も、やはりドッペルゲンガーの一つではないだろうか。
世一がドッペルゲンガーである化石を語る……という設定ではなく、化石が世一を語っている。
そうすることで世一、ドッペルゲンガーである化石がほぼ対等の存在になったかのように思えてくる不思議さがある。
それにしても自分の化石に出くわす方が、ドッペルゲンガーに出会うよりも不気味な感じがする。
獣性を剥き出しにした貪欲な私の目と
浅ましい私の心根と
私が持っている数々の奇癖と
私が背負う見るに忍びない業を
生きている世一は
瞬時にして見て取り、
そして私のほうもまた
いつまで経っても目処が立たぬ彼の生と
現世のとば口で行き悩む彼の死を
しかと見て取った。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結8』75ページ)