丸山健二『千日の瑠璃 終結8』より九月二十七日「私は命だ」を読む
老僧が物乞いに語って聞かせる「命とは」「死とは」の話は、どこか遠い世界のことにも思える。
だが最後、オオルリを失って悲嘆にくれる世一が登場すると、命が、死が、突然あざやかな色彩を帯びて迫ってくる。
世一は命であり、死でもある……と思った。
そして
そこの一軒家の軒に吊るされた風鈴を一回だけちりんと鳴らし
空っぽの鳥籠を抱いて眠る少年を目覚めさせ、
なぜか心が酷く荒れている彼は
ほどなく湖を見下ろす崖っぷちに立つと
私のことを突き落とそうとした。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結8』109ページ)