こうして母親と息子のあいだにある氷の壁はだんだんと厚みを増していき、その壁ごしに話はできるのだが、その壁は軽い言葉のきらめきにも冬の寒さをあたえるのだった。その若者は、ある方向に自分自身を発揮することを選んでは楽しんでしまうという才能があり、食事の席では長いこと不機嫌にしていたり、言い争ったりしては、急流のような速さで世間話をしたり、醜聞をひろめたり、悪意にみちた話をするのだが、そうした話は真実であることもあるけれど、たいていの場合はつくり話であったのだが、それでもフランチェスカはその話を楽しみつつも味わい、嫌々ながら聞かされるというよりも、むしろ喜んで聞いているのであった。
「尊敬すべき人たちから友達を選んだりしたら、ぜったいに面白くないよ。だから、こうしているほうが利点があるし、埋め合わせができるってものだ」
ある日の昼食の席で、こうした指摘を聞いたフランチェスカが鼻白んだのも、自由奔放な微笑みに裏切られてきているからであり、その微笑みは彼女がとるコーマスへの態度を考えると許し難いものであった。