サキ 「耐えがたきバシントン」 Ⅴ章45回

コートニー・ヨールは創造主から、熱烈な、あるいは献身的な恋人の役割を果たすように設計されていなかったので、創造主がさだめた限界を良心的にも尊重していた。しかしながらモリーにたいしては、たしかに敏感な愛情をいだいていた。彼女が慕ってくれていることは明らかだったが、それでいながら稚拙なご機嫌取りで責めたてることもなかった。戯れの恋が何年もの試用期間に耐えた基本的な理由とは、間隔も都合よく、恋が高じて活動的な存在になるという事実のせいであった。今は電話のせいで人々のプライバシーという要塞が衰退し、隠遁生活の高潔さがかかっているのは、ボーイのように機転のきいた嘘をつく能力という時代である。ヨールは、自分の美しい女性が一年の大半を費やしているのは、自分を追いかけることではなくて、狐を追いかけることであるという状況を深く理解していた。これも認識されている事実だが、彼女が人間狩りをするときは、一匹以上の獲物を追いかけては、やがて恋と別れをつげることになるのだが、そのことに彼女も相手も当惑することもなければ、仕返しをすることもなかった。青春を楽しむ年頃が過ぎても、彼女も、相手も自分の人生が壊されたと責めたてることはなかった。せいぜい週末が乱れたくらいのものだろう。

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