アーサー・モリスン倫敦貧民窟物語「ジェイゴウの子ども」13章89回

ジョシュ・ペローに、大声をあげ小躍りをしている群衆は魅了された。ジョシュはもみくちゃにされながらも、にやりとした笑みをうかべ、あちらこちらで背中を平手でたたかれたかと思えば、飲み物をすすめられたりした。その群衆から離れたところでは、あいかわらずコイン投げに取りつかれている者たちが、ペニー銅貨をひっぱりだしては再び賭けに興じた。

 ディッキーは走りまわっては笑い声をあげ、顔を紅潮させて有頂天になっていた。目の前がぐらぐらするなかで、扉がようやくはっきりとした形をとりはじめると、すぐに階下へと駆け下りていった。母親は安堵し、喜びも感じながら、この一件で金がいくら入ってくるのだろうかとさっそく推測をめぐらした。赤ん坊を寝台に横たえ、窓から外を見た。

 ジョシュは群衆に囲まれていたが、彼女に合図をおくってきた。むきだしの肩を指さし、手でたたいた。服が欲しいのだ。彼女はシャツやら上着、ベストをあつめ、階下へと急いだ。ルーイを数分寝台に寝かしておいたところで、まさか危害がくわえられることはあるまい。そして心から、ハンナ・ペローがひしひしと感じていたのは、自分が人々から注目される人物なのだという思いだった。そこで外出するにしても、何の呵責も感じなかった。

「奥方に万歳三唱」群衆のあいまをかきわけて彼女が進んだとき、キドー・クックが唱えた。「その男が、おまえに二度、三度と頭をさげて挨拶をすることになると言っただろう」ジョシュ・ペローは、ほんとうに金持ちになっていた。五ポンドの大金持ちだった。ソブリン金貨が積み上げられた結果であり、ジョシュを応援していた者たちはソブリン金貨をつみあげたが、彼の取り分は三対一だった。だから今や、彼が大勢の応援陣にビールをご馳走していた。そしてまた、妻にも祝いに参加してほしいと願っていた。自分がサリー・グリーンの兄に復讐しようと考えたのは、妻が怪我をしたからではなかったのか。だからハンナ・ペローもびくびくしながらではあったが、マザー・ギャップの店で休もうと連れて行かれたときには嬉しくもあった。

 そこで彼女は一時間、ジョシュの横に座った。一度か二度、ルーイのことを考えてみたが、もともと鈍い性質なので、その心配は心をすり抜けていった。たぶんディッキーも戻ってくるだろうし、たまに三十分の息抜きもしたらいけないというのも厳しい話だ。やがてディッキーが姿をあらわしたが、その顔に切羽詰った表情がうかべながら、戸口のところから中をのぞきこんだので、ジョシュは物惜しみをしていると思われているのかと考え、一ペニーをやろうとした。

Josh Perrott was involved in a howling, dancing crowd, and was pushed, grinning, this way and that, slapped on the back, and offered drinks. In the outskirts the tossers, inveterate, pulled out their pence and resumed their game.

Dicky spun about, laughing, flushed, and elated, and as soon as the door was distinct to his dazzled sight, he ran off downstairs. His mother, relieved and even pleased, speculated as to what money the thing might bring. She put the baby on the bed, and looked from the window.

Josh, in the crowd, shouted and beckoned her, pointing and tapping his bare shoulder. He wanted his clothes. She gathered together the shirt, the coat, and the waistcoat, and hurried downstairs. Looey could come to no harm lying on the bed for a few minutes. And, indeed, Hannah Perrott felt that she would be a person of distinction in the crowd, and was not sorry to have an excuse for going out.

‘Three cheers for the missis!’ sang out Kiddo Cook as she came through the press. ‘I said ‘e’d ‘ave a bob or two for you, didn’t I?’ Josh Perrott, indeed, was rich—a capitalist of five pounds. For a sovereign a side had been put up, and his backer had put on a sovereign for him at three to one. So that now it became him to stand beer to many sympathisers. Also, he felt that the missis should have some part in the celebration, for was it not her injury that he had avenged on Sally Green’s brother? So Hannah Perrott, pleased though timorous, was hauled away with the rest to Mother Gapp’s.

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