アーサー・モリスン倫敦貧民窟物語「ジェイゴウの子ども」19章131回

「ちょっと待ってくれ」グリンダーはいった。「もっと話してくれないか。どういうことなんだ? 店が閉まったあとから、ピクルスを持っていくだと。ドママットが四ペンスだと」

 「ああ、たぶん単なる間違いだと思いますよ。ただの間違いですよ」ウィーチさんは答えながら、ドアの方にむかった。「揉め事には、誰もひきこみたくないしね」

 「揉め事にだと? ロースト用の真鍮の焼き串を一シリングで売っていれば、わたしが揉め事にひきこまれることになる。その話は、もっと知らなければいけない。包み隠さず話してほしい」

 ウィーチさんは考え込みながら、しばらくの間、絵の具屋の胴着の一番上のボタンのあたりを見つめ、それから言った。「わかりました、おそらく話した方がいいでしょう。あなたの立場はわかりますよ、グリンダーさん。わたしは絵のことも好きですし、商売もしていますからね。あの少年はどこにいますか?」

 「外出中です」

 「すぐに戻ってきますか?」

 「いいえ、まだ戻りません。応接間にどうぞ」

 そこでウィーチさんが、正直なところ乗り気でない様子で、グリンダーさんに説明した話によれば、ディッキー・ペローがしつこく頼んできたのは、先ほど言った値段で品物を買うことであり、その他の品物についてもせがんできた。そうした品物の名を易々とあげてみせたので、絵の具屋の主人はあっさりと信じてしまった。そして、それらの品々は、ディッキーが仕事から帰るとき、夜に届け、代金を支払うことになっていた。だが、「それは多分」とウィーチさんは結論をだし、人間の本質について意固地なまでの信念をひけらかした。「多分、あの少年は商売に慣れていないから、値段を間違えたんじゃないか。自分の主人の商売を繁盛させようと頑張っていたのだろう」

‘But look ‘ere,’ he said, ‘I want to know about this. Wotjer mean? ‘Oo was goin’ to bring round pickles after the shop was shut? ‘Oo said fourpence for doormats?’

‘Oh, I expect it’s jest a little mistake, that’s all,’ answered Weech, making another motion toward the door; ‘an’ I don’t want to git nobody into trouble.’

‘Trouble? Nice trouble I’d be in if I sold brass smoke-jacks for a bob! There’s somethink ‘ere as I ought to know about. Tell me about it straight.’

Weech looked thoughtfully at the oil-man’s top waistcoat button for a few seconds, and then said:—’Yus, p’raps I better. I can feel for you, Mr Grinder, ‘avin’ a feelin’ ‘art, an’ bein’ in business meself. Where’s your boy?’

‘Gawn out.’

‘Comin’ back soon?’

‘Not yut. Come in the back-parlour.’

There Mr Weech, with ingenuous reluctance, assured Mr Grinder that Dicky Perrott had importuned him to buy the goods in question at the prices he had mentioned, together with others—readily named now that the oil-man swallowed so freely—and that they were to be delivered and paid for at night when Dicky left work. But perhaps, Mr Weech concluded, parading an obstinate belief in human nature, perhaps the boy, being new to the business, had mistaken the prices, and was merely doing his best to push his master’s trade.

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