2018.08 隙間読書 横溝正史「真珠郎」

高木彬光「人形はなぜ殺される」読書会が契機となって本書を読んでみた。

参加者が言われていた「高木彬光やその時代の作家と今の作家では、歌舞伎的教養が今の作家とはまったく違う。そういう教養がバックグラウンドにあるから、場面場面が絵になって、ビジュアルなグロテスクさがある。○○風とは言っても、その本質は今の作家には真似できない。横溝にしても草双紙の影響をうけている。旧世代の作家の教養はただならないものがあり、今の作家には書けないものである」という趣旨の言葉が非常に心に残った。

そこで「ビジュアルでグロテスクな作品は?長門文楽の旅の友にしたいし…」と重箱の隅の先生に質問。教えて頂いた本書をようやく読んだ。

たしかにこれでもか、これでもか…と背すじが凍りそうなグロテスクな場面の連続である。さらに元妓楼の館、その前にひろがる湖、浅間山の爆発…と絵になりそうな場面が続く。

ただ、これは私の個人的な好みなってしまうけれど、犯行の動機がいわゆる世俗的なものであればあるほど、露呈したときにグロテスクさが一気に現実のものに変化、興醒めして思えてしまう。動機も浮世離れした、場面もこの世のものと思えない…そんなミステリがあればいいな、「奇譚を売る店」みたいに。また教えて頂かなくては…と思いつつ頁を閉じる。

あ、「買ったら表紙を見ないでカバーをかけてもらうように…読むまではマジマジと見ないことをお勧めします」と助言してくださいました重箱の隅の先生の親切さに最後に納得。

2018/8/25読了

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