井戸替えが書かれている作品として、原先生に教えて頂いて読む。
講談の大岡政談「権左と助十」をもとにして、岡本綺堂が歌舞伎用に書いた二幕ものの戯曲。大正15年初演。
もとは大岡政談であっても武士はほとんど現れず、中心になるのは長屋の人たちー駕籠かきの夫婦、猿回し、大家―である。
7月7日の井戸替えの日、長屋は大騒ぎでてんてこ舞い。なかには「手伝わない」とそっぽを向く者もいれば、そうした者を叱りつける者もいて、井戸替えは長屋の人間模様がでてくる行事でもあり、綱引き感覚で皆で盛り上がってしまう行事でもあると興味深く読む。
そこに無実の罪をきせられ長屋から牢にひっぱられ獄死した男の息子が遠方から訪ねてきる……結末はさすが大岡忠相である。
ただ猿回しの猿が殺されてしまうの哀れである。この猿は、舞台で演じるのは人間?それとも人形なのだろうか?舞台を想像しつつ頁をとじる。
(2019.05.20読了)