さりはま書房徒然日誌2023年7月22日(土)旧暦6月5日

勤め人人生のデトックスを……

勤めている頃は、みんな休日の終わりが哀しくて仕方なかった筈なのに…

退職すると、意外にも職場が恋しくなる人が多い気がする。

かつての同僚たちと畑仕事をしたり(退職後も管理職、ヒラとはっきり別れて別々に畑仕事をしている姿には笑ってしまった)、

旅行に出かけ、

何か少しでも職場繋がりの集まりがあれば参加する……そんな人が業種を問わず多い気がする。

人生の大半を職場で過ごし、嫌々であっても価値観を共にしてきたのだから、母体である職場消失に耐えられないのかもしれない。

そんな個人を見透かしたように、国は定年延長だの、再任用だの唱え、職場が永遠の運命共同体になるように仕掛けている。

でも可能なら仕事を離れる期間は必要だと思う。そのまま仕事を辞めるなら、職場からのデトックスを心がけなければ……と思う。

職場の価値観よ仲間よサヨウナラ、ハロー本来の自分新しい自分……そんなデトックス期間が必要だし、デトックスに踏み切れるだけの余力を残して働かなくてはいけない気がする。

丸山健二「おはぐろとんぼ夜話」を読む

丸山作品を読んでいて心打たれることのひとつに、ありふれた生を送っていた人たちの終焉の描き方に言葉を尽くして心をこめて送り出している……という点。

感嘆するほかない

雪と見紛う亜高山帯に咲く純白の花々のなかで

大きく深呼吸をした際に

いきなり体調に乱れが生じたかと思うと

以後

それきり再起不能に陥ってしまい、

ほどなく

だしぬけに気が転倒したあげく

突風をくらった案山子のごとく

ばたんと卒倒し

(丸山健二「おはぐろとんぼ夜話」中巻345頁)

あるいはこんな風にも……。

淡雪を巡って春の光がゆらめくなか

風にかしぐ草を思わせる乱髪の老人が

寂滅の意味をやすやすと超越した絶命を迎え、

(丸山健二「おはぐろとんぼ夜話」中巻351頁)

とても辛辣な描写をすることもあるけれど、普通の人の最期をかくも美しく書く心に、凡庸な生へのレスペクトがあるように思う。

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