『千日の瑠璃 終結5』より十二月二十一日「私は床板だ」を読む
十二月二十一日は「私は床板だ」と、長年の歴史に耐えかねて抜け落ちた世一の家の台所の床板が語る。
床板が抜け落ちても、リゾート開発会社に土地を売り、儲かる気になっている一家は朗らか。新しい家の夢やら陽気に語り合う。
そんな一家にゲンナリする気持ちをあらわすかのような床板の様子が、何となくユーモラスである。
楽しげな雰囲気が引き継がれた夜半
皆が眠りに就いた頃
彼らの夢の重さに耐えかねて
私はもう一度どすんと抜け落ちた。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結5』189ページ)