丸山健二『千日の瑠璃 終結8』より九月三十日「私は気遣いだ」を読む
「日々悪事を重ねる長身痩躯の青年と 何も求めずに生きることに決めた『三光鳥』の女将の 少年世一に対する気遣い」が語る。
この二人にさらに世一の父親の相手をしてきた娼婦が加わって、世一の噂をしているところに、当の世一の口笛が聞こえてくる。
不自由なはずの世一の意義とは? あらためて、その意義を考える文。
ややあって
少年世一の口笛が急接近し、
それは湖面を渡る風に吹かれて
散り散りに飛ばされ、
その断片が「三光鳥」にも届いて
三人の口を封じ
三つの心に抗いがたい揺さぶりを掛けた。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結8』121ページ)