丸山健二『千日の瑠璃 終結6』より五月二日「私は『まさか』だ」を読む
まほろ町の街道に身を投げて轢死した少年ー実は放火癖のある少年ーの死をめぐって、人々の口から飛び出す「まさか」という言葉が集まってきた人々を観察して語っていく。
様々な反応の合間に残される不思議が心に残る。
以下引用文。死んだ子供が潰れた指を使いながら書いた文字。
そのままの言葉を伝える「 」の中には、子供が残す筈のない言葉。
このあり得なさ、不思議さが伝えようとする世界を思わず懸命に考えてしまう。
文字はどれもしっかりして
それ以外の読み方などあり得ず、
なんと
「このよにふかいりしすぎた」とあったのだ。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結6』316ページ)
丸山先生らしい男も登場しては「素晴らしい詩人になったのに」と言いつつ「失望感はさほどでなく」、さらに死んだのが世一出ないと知って安堵の溜息をつく。
このあり得ない距離感が、不思議なリアリティを生んでいる気がする。
以下引用文。丸山先生らしき男は、更なる不思議に気がつく。青尽くめの少年世一の不思議さ。「私にどんと背中を突かれ」とすることで、ただ順に書いていけば怪奇風味のある小話が、深みのある世界になっているように思う。
見物している青尽くめの少年の人差し指が
赤く染まっていることに気づいて
私にどんと背中を突かれ、
「合作ってことかな」と言ったあと
しばらく考えこんでいた。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結6』317ページ)







