さりはま書房徒然日誌2024年10月18日(木)

ひと折り中とじに挑戦したら、冊子が可愛い上製本に変身!

製本基礎講座三回目の今日は、まず、製本の大切な材料であるのりやボンドについて、成分やら作り方、保管方法など細かくレクチャーを受ける。のりでもメーカーによって成分が違うとは知らなかった。

今日はひと折り中とじに挑戦。絵本によく見られる製本方法だそう。

コピー用紙を半分に切って、真ん中部分を糸でかがる。私がかがると糸がゆわーんとしてしまう。でもすぐに先生が直してくださる。

小さな冊子でも、寒冷紗をつけ本文と接着、クロスにボール紙をのせ見返しに接着すれば、小さいながら本らしい感じに。

今日の作業は記憶の彼方に霞みつつあるけど、授業は毎回詳細に手順を記したテキストを配布して頂ける……なので家で復習しようと、色々買い込んだもののどうなるやら?

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さりはま書房徒然日誌2024年10月16日(水)

PASSAGEにある本です!

PASSAGE 1階にある本

神田古本祭りも近いし、丸山健二先生の「言の葉便り 花便り 北アルプス山麓から 」発売も間近だし……と、PASSAGEとSOLIDAにある本を確認。いつの間にやら増殖していった感があります。こちらに記入漏れや記載ミスもあるやもしれません。価格は税込です。

栗林佐知さんのけいこう舎の本があります。「ぱん歴」も近日中に補充します。

吟醸掌篇vol.4(短篇小説を愉しむ文芸誌)1210円

山﨑ノ箱 1760円

超短篇画集 丘の団欒(まどい)

吟醸掌篇vol.5 ~女性作家ミステリ号~

以上、けいこう舎の本でした。他にもあります。

重信房子 パレスチナ解放闘争史: 1916-2024

シリーズ紙礫18血の九月(SOLIDA出張応援販売に出ているようで、SOLIDAの私の棚か、その近辺にあるかと思います)

季刊さりはま2号

丸山健二文学賞第4回受賞作品「恍惚のトルソー」澤間静吉

丸山健二文学賞第5回受賞作品「終の稜線」中谷嘉秀

丸山健二文学賞第6回受賞作品「流謫の行路」秋沢陽吉

丸山健二「千日の瑠璃 終結」2〜10

丸山健二「人の世界」1980円

(1が売れて再度注文していますが、現在版元が出荷を一時停止されているとのこと。丸山先生がだいぶ手をいれて直しているので早く再開されるようにと思います。ただ厳しい昨今です……)

いぬわし書房のフリーペーパー無料丸山健二先生の最近の文が読めますよ。

SOLIDA2階にある本

出張応援販売ということで、下の棚にも一時的に置いて下さっています。
エチカ・一九六九年以降 福島泰樹歌集 3000円

寺山修司全歌論集1900円

美しき独断 中城ふみ子全歌集 3000円

伊藤裕作「寺山修司 母の歌、斧の歌、そして父の歌」1980円

伊藤裕作「心境短歌 水、厳かに【わたくしたんか みず、おごそかに】」

丸山健二「ラウンド・ミッドナイト 風の言葉」2860円

福島泰樹「うたで描くエポック 大正行進曲」3300円

重信房子「歌集 暁の星」2200円

万葉集 全訳注原文付(1)〜(4)

藤島昌司 「なんじょすっぺ 福島からのメッセージ」200円

綿田友恵 「歌集 父、母、赤鉛筆……」1870円

歌誌月光86号 1100円

中原中也全詩集 角川ソフィア文庫 1606円

寺山修司全歌集(講談社学術文庫 2070) 1386円

沙果、林檎そして: 李正子歌集  1650円

生野幸吉 「闇の子午線パウル・ツェラン」1550円

いぬわし書房のフリーペーパー無料

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さりはま書房徒然日誌2024年10月15日(水)

丸山健二『千日の瑠璃 終結4』九月二十一日を読む

ー藍染だからこその力強さー

九月二十一日は「私は藍だ」で始まる。手織りの布を藍で染め、寝たきりの夫を介護する老婆の染める藍が語る。
以下引用文。老婆は世一を呼び止め、身体を測る。そしてしばらくしてから……が以下の展開である。今まで世の謗りを受けてヨレヨレになったシャツ、老婆が仕立てた藍染のシャツとのコントラストが心に残る。「初秋の空に溶けて 別格の存在に」と語られる世一も……。そうした言葉にこもる思いの強さも丸山先生らしいなあと思う。

汗や土埃
  差別や偏見
     嫌悪や憎悪
        憂いや憤り
           そんなものにまみれてよれよれになった半袖のシャツを手に、


私が全情熱を傾けて染めた
   真新しい長袖のシャツを着こんで
      丘の家へとつづく道をてくてく歩いて登る
         必ずしも儚い命とは言えぬ少年は
            たちまちにして初秋の空に溶けて
               別格の存在と化した。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』225ページ)
    

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さりはま書房徒然日誌2024年10月14日(月)

丸山健二『千日の瑠璃 終結4』九月十六日を読む

ー宇宙は無数にー

九月十六日は「私は体積だ」で始まり、世一の体の体積が語る。

以下引用文。丸山先生らしい「宇宙は無数に存在」するという考えが出ている箇所で興味深い。だんだんイメージが追いつかなくなったところで、ホウセンカの種が出てきて、なみみ深いこの世に帰ってくる感じがある。

こうした宇宙は無数に存在して
   さながら水泡のごとく
      ひっきりなしに消えたり現れたりしているのだから
         少しも貴重ではなく、

つまり
   永遠の存在もなければ
      永遠の無もなく、


無は自身のあまりの空しさに耐えきれずに
   のべつ揺らぎ、

その揺らぎが限界に達したところで
   特異点と化し、

そこから新しい世界の種が
   ホウセンカの種のように
      ポンと飛び出すのだ。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』204頁)

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さりはま書房徒然日誌2024年10月13日(日)

丸山健二『千日の瑠璃 終結4』9月15日を読む

ー生から一転して死の世界へー

九月十五日は「私はサルスベリだ」で始まる。なんとも幻想味漂う箇所である。

以下引用文。寺の境内に咲くサルスベリ。その姿が生気にあふれる分だけ、死霊たちとのコントラストが鮮やかで印象的である。

私はサルスベリだ、

まだまだいくらでも花を咲かせつづけて夏を限界まで引き延ばす
   動物並の生気に満ちあふれた
      この界隈では一番古手のサルスベリだ。

ありったけの紅色を武器にして
   境内に漂う死の気配を相手に孤軍奮闘している私は、

隙あらばこの世に舞い戻ろうと機を窺う死霊たちの
   虫のいい願いを押し返しており、


(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』198ページ)

豪雨で崖が崩れ、寺の墓石も全部土砂に埋まるなか、サルスベリは墓地の水分を吸い上げる。すると花は黒く変色して落下。

枝にとまった青い鳥が「おまえは死んだのさ」と鳴く。
生にあふれていたサルスベリが死んだ木に一変する展開に、華やかな生が死に転じることで不思議な色を帯びてくるのを感じる。

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さりはま書房徒然日誌2024年10月11日(金)

丸山健二『千日の瑠璃 終結4』九月十二日を読む

ー楽器の音色が語りかけてきそうー

九月十二日は「私は楽器だ」で始まる。薪ストーブ作りの男が久しぶりに手にした「金属製のリード楽器」が語る。

以下引用文。楽器の奏でる音が聞こえてくるような気がするのは「滑り」「吸いこまれ」「諭し」というサ行音の効果だろうか、それとも「吸いこまれ」「失いつづけ」と平仮名の量が多いせいなのだろうか?楽器の音が流れてゆく風景、その音に託した楽器の、丸山先生の声が聞こえてきて印象に残る。

十数年ぶりに私が発する震動は
   夜気を震わせて湖面を滑り
      星夜へと吸いこまれ
         奏者自身の胸のうちへと逆流し、

あれから何を失ったのかをやんわりと諭し
   今なお失いつづけて
      このままでは芯から腐ってしまうことを
         厳しく指摘して警告を与えてやった。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』189ページ)

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さりはま書房徒然日誌2024年10月10日(木)

製本基礎コースに行ってきました

ー糊を使わない製本ー

まるみず組での製本基礎コース第2回に行ってきました。
今回は糊を使わない製本です。

定規で測った筈なのにズレている……
モタモタして中々カッターで切れない……
すぐに手順を忘れてしまう……など情けないかぎり。

定規できちんと線が引けるって才能だなあと嘆きつつも、根気強い先生のおかげで無事に完成!でも背の糸がアンバランス……なのは次回の反省に。

材料は紙とクロスと麻ひもだけ。それだけで完成するとはすごい。
リボンの位置や太さは自由に変えられます。

ちなみに中に写真を貼ったり、短歌を貼ったり、色々貼れそうです。
訊いてみたら田畑書店のポケットアンソロジーは、この綴じ方を使っても、あるいは別の綴じ方でも変身させられるとのこと。ポケットアンソロジーで製本の復習をしてみるのも楽しそう。


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さりはま書房徒然日誌2024年10月9日(水)

丸山健二『千日の瑠璃 終結4』九月六日を読む

ー行商の娘がざらっとした印象を残すー

九月六日は「私は無視だ」で始まる。

おそらくこの少女は、丸山先生が実際に見かけた娘なのでは?日本海の街からはるばる信濃大町まで大糸線に乗って行商に来た娘がいるのでは?とも思う。

列車やバスを乗り継いで
   はるばる海の町から行商にやってきた娘
      そんな健気な彼女の
         少年世一に対する無視だ。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』162ページ)

以下引用文。世一の家のある丘で弁当を食べ、世一がお茶を出しても頑なに無視をする娘。オオルリが「感謝の言葉はどうした」と促しても、やはり無視を続ける。そんな娘が呟く「あんたは飛べない鳥だね」というのはオオルリなのだろうか、世一なのだろうか……いずれにしても心に残る言葉、娘である。

さっさと弁当を食べ終えた彼女は
   どこか遠くを
      山の彼方や
         空の彼方に目をやりながら
            お茶で口をすすぎ、

「あんたは飛べない鳥だね」と
    意味深長な言葉を呟いた。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』165ページ)

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さりはま書房徒然日誌2024年10月8日(火)

丸山健二『千日の瑠璃 終結4』九月五日を読む

ー子供らしくないのに心に残る世一の言葉ー

九月五日は「私は躊躇だ」で始まる。丘の上の家から下ってくる途中の世一がかられた「躊躇」が語る。
以下引用文。滅多に会話文を使わない丸山先生の「なんなら人間を辞めてもいいんだが」という子供らしくない台詞はどこか挑戦的で、不気味で、心に引っかかるものがある。

生きる勇気をさかんに鼓舞する青い鳥も次第に疲れを見せ始め
   ために
      私が再度勢いづいたことでその場にうずくまった世一は
         「なんなら人間を辞めてもいいんだが」
            そんなことを口走った。

(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』161頁)

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さりはま書房徒然日誌2024年10月7日(月)

丸山健二『千日の瑠璃 終結4』九月四日を読む

ー身近な自然の美しさー

九月四日は「私はトマトだ」で始まる。退院した世一が自宅の庭のトマトからもぎとって食べる黄色い実が語る。
以下引用文。世一がもぎとったトマトをかじる場面。丸山先生の文は、こういう身近にある自然を描くとき、万物の真理がパッと開くような美しさがあるなあと思う。

ともあれ死なずに済んだ世一は
   食べるのを中断して
      私のことをしげしげと見つめ直し、

日にかざして
   色の鮮やかさにうっとりと見とれる。

そのついでに
   おのれの手を流れる血液の赤と
      太陽の金色を半ば夢見心地で眺めながら、

二階の部屋の
   さながら天国の門のごとく開け放たれた窓から
      惜しげもなくばら撒かれる
         青い鳥のさえずりにじっと聴き入る。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』155頁)

 

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