工房レストアの和綴講座へ
大阪、高津宮にて、工房レストアさんが11日に開催された和綴ワークショップに参加してきた。
高津宮は国立文楽劇場から坂道を登って9分。
夏祭浪花鑑とか文楽の演目にも縁のある神社で、1150年以上の歴史がある。
文楽劇場から坂道を登ること9分。ようやく着いたと思えば、最後まで階段が続く。
昔、この神社から海が見えたとのこと。
今では高速道路、ビル、そして怪しいホテル街に囲まれているが。
こんな由緒ある神社の、結婚式にも使われる末広の間で、紙製文化財の修理、修復、複製をされている工房レストアさんが、和綴じ講座を開催してくれた。
工房レストアの社長が教え、若い女性社員二人が補助に入ってくださる。
「何回、和綴講座に参加するの?」と突っ込まれそうだが、基本の動きは同じでも、こだわりの動きが微妙に違うのが、手製本の面白いところ。
こよりの作り方にしても、人それぞれである。私はこより作りが苦手だったのだが、レストアさんの一工夫を真似したらスルスル出来た。
合間に和紙について、修復の現状について、アツいお話が聞けるのも、レストアさんの講座の面白さである。
和綴本に使う和紙にしても、表紙は染紙、本文は画仙紙、雁皮紙、機械漉き楮紙、手漉き楮紙、パルプ和紙混合のロール紙と、色々な和紙を混ぜて揃えてくださっていた。
和紙ごとに異なる手触りを楽しみつつ、解説を伺った。
雁皮紙(ガンピシ)の材料、雁皮は植林できないので、山に入って採取しなくては行けない。
一日かけて集めても、2キロ採取するのが精一杯。ゆえに高価。
繊維が細かく、紙漉きのときに沈むので布をひく。
そうして出来た雁皮紙は密度が高く、滲むことなく細い線が書ける……そう。
機械漉き楮紙は透かしても竹の繊維がないが、手漉き楮紙は横の繊維が見える……知らなかった。
外国産の材料を混ぜた和紙は安いが、日本の気候風土に合わないため、やがて紙が黒くなってしまう。だから工房レストアでは使用していないとのこと。
(↓会場の椅子に並べられた紙の材料、その1)
手間ひまのかかる和紙の材料作りは、今、危機的な状況にあること。
レストアさんも四国の山に入って、紙の材料となる植物を植えたりもしてきたそう。
(↓紙の材料 その2)
合間に修復の仕事についてお話が伺えて興味深い。
昔の雑誌はホチキスが錆びる時期にきているため、紙の紐に変えてくれという依頼も多いとのこと。
また古文書をバラしてPDF化、また綴じ直す……という仕事も多いそう。
そういう紙の修復の仕事があるとは……知らなかった。
(紙の材料 その3。叩いてほぐした繊維。顔を近づけると、プンと山の匂いがした。
紙の材料は山の匂いに満ちている……ということも新鮮な発見)
和綴完成後、社員さんが普段のお仕事風景ー古文書の和綴本をバラして、また綴じ直すーを見せて下さる。(↓ 下の写真)
こよりを金槌で叩いて仮留めするときも、古文書の場合、本文を汚さないように紙をひくそう。
また古文書は虫食いの穴がたくさんあるため、糸を通す穴なのか、虫食いの穴なのか、見極めに時間がかかるそう。
でも早い!
Screenshot
私も完成!紙の異なる和綴じで水墨画にトライするのが楽しみ。
横のバッジはお土産にいただいた工房レストアの缶バッジ。
最後、レストアさんが会場に茶話会タイムを設けてくださる。
高津神社富亭カフェの名物、氏子ロールやお菓子を用意してくださる。
氏子ロール、品のいい甘みに生姜が入っていて美味しい!
他の参加者の方の紙との関わり方やレストアさんの社員の話が伺えて、茶話会も興味深いひとときだった。
特に修復を専攻されたわけではないけれど、美術を学んでいた、手仕事が好きだった……という若手社員さんのお話を伺う。
ご自分の好きをお仕事にされていく姿勢も、そうした気持ちを持つ社員を育てていかれるレストアさんの姿勢も素晴らしいなあと思う。
さらに社員さんのライフスタイルの変化に合わせて、リモートを組み合わせたりと柔軟に勤務の在り方を変えているらしいレストアさんの様子。
古い資料を扱いながら、社員を大切に、新しい勤務体系を導入されているレストアさんの柔軟さにも感動。
「薄い和紙がうまく切れなくて、たくさん無駄にしてしまって」という私の嘆きへのアドバイスは、まるみずの先生とピッタリ同じ。
カッターは軽く、軽く持って、刃をこまめに交換しなくては……と反省。
さらに「和紙はたくさん無駄にしていいんですよ。そしてたくさん買ってくれたら、和紙を支えることになるんですよ」との言葉。
そうかあ、自分で購入した紙は無駄にしても、また買うことで和紙を作って働く人たちを支えることになるんだ……
色々学んだ一日、レストアさんに感謝!
また来年、何かの講座を企画してくださるとのこと。大阪は遠いが参加できたらと楽しみにしている。